マック・ミラーにアヴィーチー。若手アーティストの死の背景

2018年に入ってから、才能ある若手アーティストの死に関するニュースが耳に飛び込んできた。4月のEDM系DJのAvicii(アヴィーチー)に始まり、9月にはHipHop歌手のMac Miller(マック・ミラー)だ。なぜ才能あるアーティストは若くして亡くなってしまうのだろうか。

 

自殺とドラッグ

彼らの死因は、それぞれ自殺と薬物の過剰摂取だったことが発表されている。

アヴィーチーは当初から自殺の可能性を指摘されていたものの、家族の発表によって認める形となった。近年は、アルコールの過剰摂取が原因で膵炎を発症し、健康上も万全の状態ではなかったようだ。体の痛みやストレスが重なり、自殺を選択してしまったのかもしれない

遺族の発表では、“He really struggled with thoughts about Meaning, Life, Happiness.”とのコメントがあった。人生や幸福の意味について考えることに苦しんでいたとするなら、鬱状態にあった可能性もある。

マック・ミラーの死因は、薬物の過剰摂取とアルコールの混合によるものだ。彼は昔から薬物依存症に悩まされていることを公言しており、亡くなる4ヶ月前には麻薬服用による運転で逮捕され、メディアを騒がせていた。

5月末頃に発表された2年間交際していた歌手ArianaGrande(アリアナ・グランデ)との破局が、再びドラッグへと誘引されるきっかけになったのかもしれない。

友人でありアーティストであるChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)は、シカゴでのコンサートの中でマックの追悼曲を歌う際、次のように話している。

「この曲を彼に捧ぐよ。だって彼は解放されたかったのかもしれないと思ってしまうから(this song is for him because I feel like sometimes he wanted to let go,)」。マック自身が何らかの悩みを抱えており、自暴自棄の末薬物を摂取したという説もあちらこちらで目にする。

 

計り知れない栄光と影

アヴィーチーは、EDM界ではすごい功績をなしとげた若手のスーパースターだ。18歳からキャリアをスタートさせ22歳に発表した「Levels」が世界的大ヒットを記録し人気DJのスターダムにのしあがった。

「Levels」は2013年グラミー賞にてベストダンスレコードにもノミネートされた。彼を印象付ける曲としては、24歳で発表した「Wake Me Up」があげられる。世界84か国でiTunes1位となり、現時点で17億回以上の再生回数を記録している。

現在のEDMシーンを牽引したといっても過言ではない存在だった。

他方、マックミラーもすばらしい逸材だ。2010年以降の白人ラッパーで名前をあげるとするならば、彼はトップ3に入る人気だろう。

インディーズ時代にリリースした「Donald Trump」では、大富豪として君臨していたトランプ氏を揶揄する内容を発表し、本人にもディスられていた。数年後のアメリカ大統領選では、再ヒットとなり驚きの再注目を集める。

マックのメジャースタートはインディーズで注目を集めた後の2011年。デビューアルバム「Blue Slide Park」で全米チャート1位を獲得した。2013年には、のちに交際することになるアリアナ・グランデのデビュー曲「the way」で共演し、話題となった。

2016年にリリースした「The Divine Feminine」は、全米2位を記録。Anderson Park、Childish Gambinoなどそうそうたるメンバーが参加する中、交際中だったアリアナ・グランデとの協演はそれぞれのファンに仲の良さを印象付けた。

実際のところ、彼の歌は知らなくても「アリアナグランデの彼氏」として知っている方も多いのではないだろうか? 最後のアルバムとなった2018年8月の「Swimming」は、全米アルバムチャート3位、全米アップルミュージックチャート1位を記録し、これが最後の作品となった。

若くして成功を手にいれた2人のアーティストは、このときドラッグやアルコール、周囲からの批判によるストレスにも悩まされていたのかもしれない。一般人からは想像もできない栄光の中で、虚構の世界にいるような空虚感に苛まれていたことは想像できる。

 

アーティストが抱える完璧なまでの繊細さ

先に伝えた通り、「この曲を聴くとマックは解放されたかったのかと思う」とチャイルディッシュ・ガンビーノは回想する。

彼の音楽を知っている人なら、どれほど繊細な音楽を作る人かわかるはずだ。アルバム毎に自らの色を変え、ときにはヒップホップから逸脱するようなデリケートで女性的な側面も見せる。

(※「The Devine Feminine」の収録曲のパフォーマンス。)

アルバム「The Devine Feminine」では、女性に対するリスペクトが感じられヒップホップが見せる男らしさ”にとらわれない表現をしていることがわかる。チャイルディッシュ・ガンビーノがいう“his corny-ass white dude, this corny-ass black dude”という言葉でよく揶揄されたという話でもよくわかる。「感傷的な白人の男、感傷的な黒人の男」は従来のヒップホップを支持してきた“男らしい”層からすると「繊細すぎる」ということだろう。

他方、アヴィーチーはどうだったか。家族が死因について発表した文章の中でこのように表現している「“Tim was not made for the business machine he found himself in; he was a sensitive guy who loved his fans but shunned the spotlight.”(ティムは彼が望んだ音楽業界で、ビジネスマシンにはなれなかった。ただ繊細で、ファンを愛する人だった。ただスポットライトを避けたのよ)

アヴィーチーの楽曲の歌詞もまた繊細なものが多かった。「Wake Me Up 」では夢を追いかける若者を応援しつつも、「目が覚めたとき、自分を見失ってたと気づく」と、どこかで寂しさを感じさせる歌詞が得意だった。刹那的な歌詞が多いのは、彼自身も壊れやすい心を抱えていた証拠だったのかもしれない。

悲報の2年前、彼は突如休業することを選択していた。一度、普通の生活に戻りたかったそうだ。熱狂と興奮が渦巻くEDMの波の中で、いつの間にか自分を失ってしまったのかもしれない。

 

影響は次世代のアーティストに

2019年1月に入り、マックミラーの最後のアルバム「Swimming」がベストラップアルバムとしてグラミー賞にノミネートされたとの知らせが入った。授賞式には、遺族が出席するそうだ。

亡くなってからのグラミー賞受賞は悲しいが、彼がいかに素晴らしいアーティストであるかということに華を添えることができるのは嬉しい。

28歳(アヴィーチー)と26歳(マック・ミラー)という若さで亡くなった2人、彼らに影響を受けたアーティストが彼らの音楽を受け継ぎ新たな創作の芽が息吹くことを期待したい。

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